偏西風によって広範囲に飛んでいます。
黄砂飛んでいる範囲
北東アジアを起源とする黄砂は偏西風により輸送され北太平洋を横断し、北米大陸まで到達していることが衛星画像やモデル計算によって明らかになっています。
*偏西風(へんせいふう):北半球及び南半球の中緯度(35~65°)地域上空で西から東へ吹く恒常風(こうじょうふう)のこと。
*恒常風(こうじょうふう):年間を通して決まった方向に吹く風を意味する。
黄砂が飛ぶ仕組み
土の表面に風が吹くと黄砂が舞い上がり、大気中に浮遊して黄砂の粒子を核とした砂塵の雲ができる。偏西風がその砂塵の雲を西から東へ運んで行きます。この雲から雨が河川や大地に降ることによって地球全体の気候に影響を及ぼしています。
飛来する黄砂の分析
黄砂の飛来時期
3月から上昇して4月にピークを迎え、5月から徐々に下火になっていきます。
黄砂粒子
造岩鉱物:石英・長石など
粘土鉱物:絹雲母(セリサイト)・広陵石(カオリナイト)緑泥石(クロタイト)などが多く含まれている。
日本まで到達する黄砂の粒径の分布は、直径4ミクロン付近にピークがあるようです。
土壌起源ではない成分
土壌起源ではないイオン物質(アンモニウムイオン、硫酸イオン、硝酸イオンなど)が検出されています。
PM2.5
2.5㎛(マイクロメートル)以下の粒子のこと。微小粒子状物質ともいう。
黄砂にくっついて飛来する為、健康被害などが報告されています。
黄砂の影響
インフラ被害
中国では道路や線路等の社会インフラに被害があり、黄砂がかなり飛んでいる時期は視界不良により飛行機の欠航や交通マヒなどが起こります。
精密機器の被害
韓国は中国に近いので、日本よりも被害が大きく、精密機器工場に黄砂が入り製品の不良が起きるケースが報告されています。
健康被害
黄砂と共に飛来しているPM2.5や有害物質などから、喘息や気管支炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎などを起こしたり悪化したりすることが報告されています。
健康な人でも目や鼻、耳の穴がかゆい等体の不調があります。
農作物の被害
黄砂の飛来により大気汚染物質も連れてくるため、農作物の生育不良が起こっています。
黄砂発生源
中国環境問題を研究してこられた大阪大学大学院の深尾葉子准教授によると、タクラマカン砂漠から黄砂が飛んできているのではなく、日本に近い内モンゴルや華北地方から飛んでくるということだった。
具体的にはモンゴルや内モンゴル、新疆(しんきょう)ウイグル自治区で、砂漠よりその周辺の農地やオアシス、道路だった。
中国の里山破壊
中華食材のとりすぎ
髪菜(はつさい)は陸生の藍藻の一種。中国では乱獲が環境破壊を招いたとして問題となった。
草原に覆いかぶさるように長い年月をかけて生育していたが高い売値であることからとりすぎ、
元のように剥ぎとられた草原の土の表面を覆うようにはならなかった。
漢方薬や燃料用の木の取りすぎ
「甘草」等の漢方藥になる生薬は根こそぎ採取され使われていること。柳など在来植物を掘り取って燃料にする為、植生を破壊しがちになった。
*植生(しょくせい):地球上の陸地(砂漠や氷河などは除く)は何らかの植物被覆でおおわれている。その植物被覆のことを植生という。
狭い許可地での過多な放牧
遊牧民に許された狭い範囲の土地に多くの牛や馬を放牧することで植生を破壊してしまう。
草原の耕地化
牛や馬の餌としてトウモロコシを栽培せざるをえなくなり、草原を耕作地にしてしまう。
地下資源の採掘
金や石岩の採掘など
開発
経済成長下で過剰な開発が急速に進められた為、土地の劣化が起こる。
まとめ
かつては”黄砂の飛来”は季節の風物詩のようだったが、近年は中国やモンゴルの経済が成長する上で単なる自然現象から、森林の減少、土地の劣化、砂漠化といった人為的な影響による側面も持った環境問題に発展してきている。
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