公益財団法人介護労働安定センターは、令和4年8月に公表した「令和3年度”介護労働実態調査”結果の概要」によると8742事業所のうち、「パソコンで利用者情報(ケアプラン・介護記録)を共有している」と回答した割合が52.8%と昨年より2.4%高くなっています。
ICT化導入率
2020年 | 2021年 | |
パソコンでる利用者情報(ケアプラン・ 介護記録など)共有 | 50.4% | 52.8% |
記録から介護保険請求システムまで 一括している | 39.1% | 42.8% |
タブレット端末などで利用者情報 (ケアプラン・介護記録など)共有している | 22.0% | 28.6% |
ICT導入なし | 25% | 22% (無回答8.4%) |
ICT化されている割合が年々高くなっています。
2022年10月地点では、約7割近くの事業所でICT導入されているようです。
介護保険の目的
目的
この法律は加齢に伴っておこる心身の変化。それによりおこる病気等で介護状態となり、入浴や排泄、食事などの介護機能訓練や看護及び療養上の管理、その他の医療を必要とする者等について”尊厳をもって、今ある能力に応じて自立した日常生活を営むことができるようにする。
そのために必要な保険医療サービスおよび福祉サービスにかかる給付を行う為、国民の共同連帯の理念に基づいて、介護保険制度を設けた。その保険給付等に関して必要な事項を定め、国民の保健医療の向上と福祉の増進を図ることを目的としています。
介護保険制度
介護保険制度は、平成12年4月からスタートしました。
住んでいる市区町村(保険者といいます。)が制度を運営しています。
我々は40歳になると、被保険者として介護保険に加入します。
65歳以上の方は、市区町村(保険者)が実施する要介護認定で介護が必要と認定された場合、いつでもサービスを受けることができます。
また、40歳から64歳までの人は、介護保険の対象となる特定疾病により介護が必要と認定された場合は、介護サービスを受けることができます。
平成27年4月からは介護保険の予防給付(要支援の方に対するサービス)のうち介護予防訪問介護と介護予防通所介護が介護予防・日常生活支援総合事業(以下「総合事業」という。)に移行され、市町村の事業として実施されています。
総合事業には、従前の介護予防訪問介護と介護予防通所介護から移行し、要支援者と基本チェックリストで支援が必要と判断された方(事業対象者)に対して必要な支援を行う事業(サービス事業)と、65歳以上の方に対して体操教室等の介護予防を行う事業(一般介護予防事業)があります。
*40歳以上の方は、介護保険料を毎月支払うこととなっています。この保険料は、介護保険サービスを運営していくための必要な財源です。
過酷な労働環境
介護の種類色々
おむつ交換、ポータブルトイレの清掃、汚れた寝具や寝間着の交換(人により1日に何度も交換する場合がある)、入浴介助や清拭、食事の介助、口腔内清掃介助、車いす移乗、話に傾聴する等様々。
夜間勤務
夜間も眠らないで外出しようとする人、オムツをのけて糞便で寝具を汚す人、何度も大きな声で自分の部屋に来てくれという人、など様々な介護を必要とする人がいます。昼間には職員の人数がそろっていたとしても夜間は人数が少なくなり振り回されることもよくある話です。
人材不足
大人を介護するには体を支えたり持ち上げたりと力勝負な場面が多い。少ない人数での夜勤等、人が辞めるとその穴を埋めるため仕事とはいえ、その分の給料が増えたとしても時間的拘束が長くなったり等嫌になってやめる職員も多い。募集しても人がこないという話もよく聞きます。
介護ICT化導入目的
情報の共有化
・事業所間でのケアプランのデータ連携
・事業所内での申し合わせの効率化
事務負担の軽減
・データ管理による文書量削減
・ケアプラン作成の効率化
・介護報酬請求の効率化
心理的負担の軽減
介護業務上様々な場面での効率化によって、時間的余裕が生まれる。介護する側にも精神的なゆとりができる。
LIFEについて
2021年介護保険法改正に合わせて、厚生労働省が新たに作り上げた「科学的介護情報システム」です。Long-term care Information system For Evidence(略してLIFE)といいます。
高齢者介護のデータベースを介護の実践で活用するというものです。
科学的介護とは
情報収集蓄積
介護サービス事業者・施設がサービス利用者である一人一人高齢者に関する「心身の状態」や「実施している介護」等の具体的内容を客観化・数値化してデータを数か月毎に収集。
オンラインで厚生労働省へ送信する。
収集した介護データの分析
厚生労働省では、収集したデータを蓄積しながら分析が行われる。
・利用者ごとの「状態の変化」などの情報を分データ化する。
・事業所ごとの長所・短所をデータ化する。
分析の成果を現場へフイードバック(戻す)
分析した情報を事業所に戻す(フィードバック)
・介護などの内容を見直し、より効果的な介護方法へ変更
・事業所自体の「強み」と「弱み」を把握し実践方法を見直す
科学的裏付け(エビデンス)に基づく介護の実践
これまで可視化することが難しかった介護サービスの効果について、データを用いて「見える化」した。そこから介護サービスの質を改善することを求める。
★現地点ではこの取り組みを行うか否かは、事業所の判断に委ねられています。
実施されている事業者には、介護保険で支払われる介護報酬に加算(上乗せ)が行われています。
LIFEによる収集データ項目
収集データ項目の例
分野 | 高齢者の状態 | 病歴・服薬情報・身長・体重(BMI) 血液検査データ・航空・栄養に関する情報 睡眠・手足の動き・認知症の行動・心理状態など |
高齢者への介入 | 機能訓練の内容、食事介助の場所や方法、口腔ケア方法 趣味活動の支援内容など | |
高齢者のイベント | 誤嚥性肺炎、体重減少、感染、便秘、転倒、入退院 せん妄など |
*介入:実施している介護や「機能訓練」に関するデータ
*イベント:急に大きな変化があった時の状態
全国介護サービス事業所・施設は約22万か所。介護サービス利用者する高齢者は約580万人と報告されています。
これらの事業所が高齢者各個人の情報を収集できると、LIFEに膨大なデータが蓄積されてきます。これはまさに国家プロジェクトです。そのデータを分析すればこれまでの高齢者介護とは異なる新しい介護になってくると思います。
LIFEの新たな取り組み
介護サービスの実践の質の改善
介護サービスの質の評価
介護の標準化
例えば:Aという状態の高齢者にBという介護を行えば1年後にA!という状態に改善できる。
また、Cという状態の高齢者にDという介護を行えばCを悪化せずに済むということができるようになります。
LIFEの課題
現在浮かび上がっている問題点として以下のものがあげられています。
・LIFEへのデータ提供に手間がかかる
・方針は理解できるが「活用方法」がわからない。
・自社に合う進め方がわからない
まとめ
介護の負担を軽減する為、パソコンやスマホ、アイパットなどを導入している現場が増えています。アナログで行っていた業務が簡素化され、情報も各部署で共有して知ることができるようになっています。介護は科学的根拠(エビデンス)に基づく時代へと変化していることがわかりました。
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