明治大学の宮下芳明教授と東京大学の中村裕美特任准教授お二人の研究が”栄養学賞”に輝きました。
日本人の受賞は17年連続しています。
イグ・ノーベル賞とは
1991年米ハーバード大学の科学雑誌「風変わりな研究の年報」が科学に対する大衆の関心を呼び起こすために創設された賞です。ノーベル賞のパロディーで、”人を笑わせつつ考えさせたユニークな研究”に与えられる賞。
ノーベル賞とはカテゴリーは違いますが、9つの分野で受賞されています。今年で33回目、日本人受賞は17年連続です。
名前の由来
イグノーベル(Ig Nobel)という名前は、ノーベル賞の創設者アルフレッド・ノーベルの姓に否定的な接頭語を表すIgを加えた造語。「下等な、下品な、見下げた」という意味の「ignoble」をかけたジョークになっています。
宮下氏、中村氏の受賞研究とは?
研究内容
微弱な電気を発生させ味覚を増幅させられると提唱し2011年論文として発表されました。
舌にある細胞が食べ物の甘みや塩味などを感じるセンサーとして働くと脳に刺激が伝わります。
お二人は13年前に微弱電流が舌に与える味覚の変化を調べるため、微弱電気が流れるお箸やストローを開発しました。これを使って味覚の変化を調べて発表。その後は塩味が増強されたように感じられるというスプーンなどの開発につながったそうです。
栄養学賞の受賞理由
主催者は受賞理由として「電気が流れるお箸やストローが味覚をどのくらい変えることができるのか、実験で確かめた」としています。
その他の受賞
医学賞
鼻毛の本数が左右同じかどうか確かめた米カリフォルニア大学アーバイン校チーム研究が受賞
解剖学の教科書にはそういう情報が記載されていなかった為、直接死体の鼻の中を調査研究したところ
平均右側112本、左側120本だったそうです。
化学・地質学賞
地質時代に人類の時代を追加する研究を行っている「人新世ワーキンググループ(AWG)」責任者・英レスター大学ヤンザラシェヴィッチ教授らが受賞
「科学者は何故岩をなめるのか」という研究。岩石の鉱物粒子は乾燥した表面より濡れた表面の方がよく識別できるため、古生物学者はしばしば直接岩を舌でなめると説明。
機械工学賞
死んだクモの脚を利用してものを持ち上げるピンセットのような道具を開発した米ライス大学の研究チームが受賞
死んだクモ脚に空気を入れたり抜いたりする手法で足を曲げ伸ばしすることが可能なのことを発見し、これを利用したピンセットを作りました。
教育学賞
教師と学生の退屈さが互いに影響を及ぼす現象についての研究が受賞。
研究チームは香港の中学生437名と教師17名を対象に毎日の授業の退屈度を14日間記録してもらいました。生徒たちは教師がどれだけ退屈していると感じられるか、授業中にどれだけやる気を感じるかを評価しました。
その結果教師が教えることに退屈していたら生徒たちに伝わり影響を及ぼす。生徒のモチベ―ションが下がることがわかりました。
公衆衛生賞
体から出る排泄物を内臓されたカメラ、センサー、診断検査紙などを通して色や量等の状態を分析。健康状態や病気を診断するトイレを開発したアメリカスタンフォード大学泌尿器医学科のパク・スンミン博士を含む10人が受賞
コミュニケーション賞
スペインのある地方で長文を逆さまに話すという文化があり、この逆さ言葉を話す人々は聴覚と視覚の処理に関わる神経回路に独特なパターンを含んでいることがわかりました。
普通の言葉を理解する精神活動のメカニズムを理解する為に行われた研究が受賞
心理学賞
2018年に調査を行い、大量のカタクチイワシが産卵のため群泳することで海流の散逸が通常の10~100倍に増加したことをつきとめました。このことからカタクチイワシの性活動が海洋混合(小さな渦巻)を引き起こしている可能性があることを明らかにした研究が受賞。
文学賞
ジャメビュ現象を研究したセントルイス大学アキラ・オコナー教授(神経科学)が受賞。
*ジャメビュは見慣れないものを見慣れたものと錯覚する「デジャビュ」の反対の概念
イグノーベル賞応募方法
人を笑わせそして考えさせた研究である条件を満たしていること
公式ウェブサイトで応募フォームを入手
研究タイトル
著者名
研究の概要 等を記載提出する
応募期間
2023年の期間は公式ウェブサイトで発表されていないようです。
ちなみに2022年度は1日1日から9月9日まででした。
賞金は?
2023年賞金は10兆ジンバブエドル。副賞はコーラの箱(12本未満入り)を模した箱になりました。トロフィーはPDFファイルを印刷して受賞者自身で組み立てる仕組みです。
*10兆ジンバブエドル:贈られるのは本物のお札ではなく、拡大印刷できるデータです。また2015年に通貨廃止となっていますので0円です。
授賞式は?
かつては米ハーバード大学のサンダースシアターで行われていましたが、2019年からパンデミックによりオンラインの開催となっています。
まとめ
面白い研究がなされていることがわかりましたが、おふざけではなく面白いけどまじめーな研究をなさっている方が世界中にいらっしゃるのが驚きでした(*^_^*)
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